昔話〜

本来の実家は東北の小さな村なんだよね、あんまり外とは関わり合いをしないぐらい隔絶された場所で、勿論農作物ができなかった年はうちの家では口減らしをしていた訳で、その白羽の矢が偶々俺に向けられて〜。
口減らし執行になったんですよね
あの日も雪が深く降り積もった日で…。
走りにくかったな…。
みんな口々に「幽…。ごめんね」と言いながら農具を手に後ろから追って来てたなぁ…
丁度山の中腹辺りかな、あそこで鎌が目に刺さったんだっけ。
引き抜いたら左目も一緒にとれてねぇ
止血するために自分の服を破いて詰め込んで雪で冷やしたっけな…
あまりに痛くてふらふらしてたら…
ここら辺から記憶が曖昧だな。
あぁ…父親から鉈で足を切られたんだったな、かすり傷だったけどバランスを崩して下に落ちたんだっけ
それで俺が死んだと思ったのかみんな引き上げて行ったな…
枝とかが体に刺さっててもう動けそうにも無かったしな
あまりの痛みに気絶したんだっけ、気が付いたら知らない人の家だったな
助けてくれてオマケに手当てもしてくれていた。
とても嬉しかった。
優しさに触れられた事がね
そして、病院にも連れて行ってもらえたな…
目もよくなって体も傷は治った。
でも、色覚も感情もどうやらあの雪の中に忘れてきたらしかった…。
それから五年後かな、わざと家に帰ってやった。
そん時のオヤジの顔と言ったら、まるで化け物を見るかのような目をしたと思ったらみんな逃げ出してね、傑作だったよ。
そして、月日が経ち熊本に居候として移り住んで…
今はこんな感じに丸くなれたな…